コラム

不動産屋が業者買取を勧める本当の理由

不動産の売却をするときに不動産業者が購入希望者として個人のお客様を紹介するのではなく、リフォーム会社や不動産会社を紹介する場合があります。このように不動産を業者に買い取って貰いリフォームやリノベーションで付加価値をつけて販売することを買取再販と言います。そして不動産業者は個人のお客様を紹介するよりも、買取を行っている業者を紹介する傾向にあります。結論から言うと、個人のお客様を紹介するよりも、買取再販をしている業者に紹介した方が仲介不動産業者の事務作業が簡単で尚且つ儲かるからです。
今日は、①不動産売却時の業者買取のメリット・デメリット ②不動産屋が業者買取をお勧めする本当の理由につて解説します。

不動産売却時の業者買取のメリット・デメリット

不動産を売却するときに売買再販業者に買い取ってもらう場合、代表的な3つのメリットがあります。

1,販売活動時の負担が軽減される

売却する不動産に居住しながら販売活動を進めていく場合、主に土日には物件を見学してくる個人のお客様を自宅に招かなければなりません。部屋の掃除もいつも以上に念入りにしなければならないので毎週末案内が入った場合、精神的にも体力的にも疲れてしまいます。1組のお客様のご案内で売買契約まで進められれば良いのですが、そう早く買主が見つかることはありません。一方で、業者買取の場合は一度室内の見学をすればいいだけです。業者の中には室内の写真だけあれば内見も不要という会社もありますので、忙しい方や売却を急いでいる方にとっては嬉しいメリットです。

2,現金化できるまでが早い

買いたい方が個人の方であれば住宅ローンを利用する可能性が高いため、売買契約を締結してから融資実行されるまで1ヶ月程度はかかります。一方業者買取の場合は業者ごとに設けられている融資枠の範囲であれば1~2週間で現金化や業者によっては最短1日で現金化できる業者もあります。

3,契約不適合責任が免責

一般的な不動産の取引であれば、不動産を売却した後、ある一定期間内に、例えば雨漏れがあることが発覚した場合、売主は購入者に対して雨漏りの補修費用を負担しなければならないという契約不適合責任を負います。一方、業者買取の場合はこの契約不適合責任が免責になることがほとんどなので、業者買取後に仮に雨漏りが発覚したとしても雨漏りを補修する義務はありません。

このようなメリットから、業者買取は特に買い替えや相続関係で、すぐに不動産を売却して現金化する必要がある場合に有効な売却方法といえます。

代表的なデメリット市場価格よりも20%~30%安くなってしまうことです。

例えば、近隣の成約事例から算出した査定額が3,000万円の物件の場合、買取り価格は2,400万円になるということです。600万円の金額差は何かというと、買取をした業者の再販にかかる経費と利益になります。

買取業者が買取と販売にどれくらい経費がかかり、どれくらいの利益をのせて再販しているのか?ここでは、3,000万円の中古マンションを例に具体的な数字を見てみましょう。

 シュミレーション例
 ・市場価格3,000万円、60㎡のファミリーマンション
 ・仕入れ~販売までの期間:1年
 ・再販価格3,640万円(仕入れ+経費+利益7%)
 ・固定資産税評価額を2,400万円とする

仕入れにかかる経費は680万円、再販時の経費は296万円となりました。仕入れの時の経費680万円と販売の時の経費296万円合計すると976万円が買取業者の経費となります。計算を簡単にするため雑費24万円を計上し経費は1,000万円とします。

次に買取業者の利益です。買取業者によって1件のプロジェクトに対して求められる利益率は変わりますが、ここでは大手デベロッパーの利益率を参考にして計算します。大手デベロッパーは薄利多売になる傾向があるので利益率7%とします。

上記計算で利益は約240万円になることが分かります。これはかなり良心的な方で、利益率20%以上を見込めないと買取をしないという業者も実際にあります。利益率の高い業者は市場価格と1,000万円くらい乖離した価格で売り出すこともありますが、案外売れたりもします。

ここでまず注目したいのが買取業者にかかる経費の高さです。リフォーム費用400万円は物件の付加価値を上げるための経費なのでよしとして、それ以外に600万円も経費がかかっています。仕入れと販売で支払う不動産屋への仲介手数料だけで200万円以上かかっています。買取業者は法人の為、販売時には消費税がかかりますし、登記の一部である登録免許税と不動産取得税についても、軽減措置が適用されないため一般個人の方が不動産を取得するよりも高額な経費がかかることが特徴です。だからこそ業者買取の場合は市場価格よりもかなり金額を叩かなければ買取業者としてビジネスが成り立たないのです。「買取金額が思ったよりも低くてびっくりした」という声をよく聞きます。しかし、買取業者がものすごく儲けているのかといえばそうではなく、大半は経費で消えているのです。それよりも、在庫を抱えない不動産仲介業者の方がよっぽどリスクなく儲けられるのです。

不動産屋が業者買取をお勧めする本当の理由

1,重要事項説明が不要で取引の手間が省ける

不動産業者が物件の売買をする際には宅地建物取引業法に基づき、購入者に対して宅地建物取引士が重要事項説明をすることが義務づけられています。この重要事項説明は長い時で2~3時間にわたって物件についての説明をしなければならない大変な業務です。しかし、買取業者は「不動産を反復継続して売買する業者」となるため、宅地建物取引業者の免許がなければなりません。買主が宅建業者の場合は宅地建物取引士による説明を省略することができますので、重要事項説明は書面交付で事足ります。

2,両手仲介で不動産屋が儲かる

不動産屋の売上である仲介手数料の貰い方には、売りたい方もしくは買いたい方どちらか一方から仲介手数料を受け取る「片手仲介」と、売りたい方、買いたい方両方から手数料を受け取る「両手仲介」の2種類があります。買取業者による不動産売却の方法はまさに両手仲介になります。

3,専任返しで再販売で儲けられる

買取業者は不動産業者から買取できる案件をもらうことでビジネスが始まります。よって買取業者も必死で仕入れができる不動産を探しています。そうなると、いち早く物件の情報を仕入れられる不動産業者と仲良くすることが重要です。不動産業者が喜ぶこと…それは自社専任物件の取得です。買取業者は不動産業者の紹介で買取が成約すると、再度販売する際に紹介してくれた不動産業者と専任媒介契約を締結し販売窓口とするのです。そして無事に再販売も成功したら販売手数料を支払います。不動産業者にとっては、たった一件の取引でも専任返しというプロセスまで進めることができれば儲けを増やすことができるのです。

芦屋市や西宮市での人気地区(芦屋駅、夙川駅、西宮北口駅徒歩5分圏内等)では売り物件の供給が少ないため、買取価格でも驚くような価格があります。不動産業者の本音を知ったうえで業者買取を選択するということは全く問題ありません。しかし不動産売却において何を優先するかをよく考え、自分たちに最も適したサービスを探すことが重要です。