不動産 親族間売買の注意点
不動産を親子や兄弟など親族間で売買する場合、身内だからお互いに都合がいいように決められてお得になると安易に考えている人も多いと思います。ですが、親族間売買だからといって売買価格を極端に安く設定したり、契約内容を適当にすることによって不利益になる可能性があり、他の取引よりも注意して行う必要があります。場合によっては脱税行為になったり、後々トラブルに発展するケースもあります。
そこで今回は不動産を親族間で売買する上での注意点や適正価格の決め方について解説します。
1.親族間売買する際の注意点
親族間の不動産売買において注意点が3つあります。
- 売買価格が安すぎると贈与とみなされる
- 住宅ローンが利用しにくい
- 税務上の特例が適用されない可能性がある
この3つは必ず確認しておく必要があるのでひとつずつみていきましょう。
- 売買価格が安すぎると贈与とみなされる
親族の誰かに家を売るときは、利益を出さないで出来るだけ安く売ってあげようと考えるのが一般的です。例えば、親から子に時価3,000万円の家を譲り渡す時、子供の負担にならないよう500万円で売却するといった場合です。しかし、売却価格が時価よりも極端に安いと売買ではなく贈与したとみなされ、贈与税が課税されることがあるので注意が必要です。
時価3,000万円と売却価格500万円の差額2,500万円は贈与されたとみなされ、贈与税が課税されます。市場価格とかけ離れた不動産売買を認めてしまうと、贈与税から逃れる抜け道となってしまうので国税庁は厳しくチェックしています。
- 住宅ローンが利用しにくい
親族間の不動産売買は住宅ローンが非常に通りずらいです。一般の銀行では親族間売買で住宅ローンを借りられるところはまずないと考えて下さい。理由としては親族間売買は贈与税の抜け道にされるという心配があることや、住宅ローンを利用して別の目的に使われることがあるからです。
子供が住宅ローンで借りたお金を親に支払う事になりますが、実際はそのお金を子供が使う可能性も十分考えられます。住宅ローンは住宅購入用の資金なのでそれ以外に使われてしまうと住宅ローンの趣旨から外れてしまいます。また住宅ローンを借りる際に保証会社を利用することがありますが、保証会社はこの親族間の取引を認めていません。保証会社の審査に通らないと銀行は住宅ローンを組んでくれません。親族間売買の場合は銀行からの住宅ローンの借入はほとんどできないので、取引は現金かノンバンクを利用しての取引となります。
- 税務上の特例が適用されない可能性がある
不動産の売買では様々な税務上の恩恵があり、特例や控除を受けることができますが、親族間売買では適用対象外となるケースがあるので注意が必要です。その中の一つが居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除です。通常売却して利益を得ると税金を納めなければならないのですが、この特例を使うと3,000万円の利益までなら税金を払わなくて済みます。しかしこの特例は親族間売買では適用されません。
2,親族間売買における価格設定のポイント
親族間売買での価格設定の一番のポイントは相場よりも安くしすぎないことです。親族間売買で価格が低すぎると贈与してるとみなされてしまいます。しかし、「相場よりも〇万円安くすると贈与とみなす」といった明確な基準があるわけではなく、建物の状態や立地条件において算定されるため自治体によって異なります。はっきりとした価格は提示できませんが、目安としては売却価格は相場の7~8割程度が良いです。親族間売買の為値下げが行われた、と理解できる範囲の価格としておくのがベストです。逆に相場の5割以下など極端に安く売却した場合、「みなし贈与」と判断されるので注意が必要です。
親族間売買で贈与とみなされないための価格の決め方を3つ紹介します。
- 路線価を調べる。
路線価とは道路に面した土地の評価額のことで、路線価で売買した場合は贈与したとはみなされにくいです。自分の土地の路線価は国税庁のホームページで誰でも調べることができます。
- 不動産鑑定士に鑑定してもらう
不動産鑑定士とは土地や建物の「適正な価格」決定する国家資格を持った人です。税務署に売買した価格が適正だったと認めてもらうには、不動産鑑定士に価格を見極めてもらうと信頼性が高いです。しかし不動産鑑定士に鑑定してもらうには数十万円の費用が必要になります。
- 複数の不動産会社に査定依頼をする
複数の不動産会社に査定をしてもらい、査定額の8割くらいで売却するという方法です。ただし1社のみだと信頼性に欠けるため複数の不動産会社から査定をもらって平均を出すことをおすすめします。
適正な売却価格が決まったら次は実際に売買の取引となるのですが、親族間売買であっても取引する場合には不動産会社に依頼することをおすすめします。
不動産会社に仲介を依頼すると様々なメリットがあるのですがその中でも代表的なものを2つ紹介します。
- 贈与とみなされる可能性が下がる
親族間売買の場合、贈与とみなされないように価格設定をする必要があります。不動産会社を通すと適正な価格を設定してもらえます。また税務署に対しても取引の正当性を主張できることがメリットです。贈与では無く正当な売買であることを証明するために契約書が必要になります。不動産会社に依頼するとそういった書類関係も全て任せることができて安心です。
- トラブルを回避できる
親族間で売買した場合、他の親族から「他の人に相続させたくないから売買したのではないか」、「本当は安い価格で売ったのではないか」などと疑われる可能性もあります。しかし、不動産会社が仲介に入ると、不動産会社が作成した契約書から正当な金額で取引したことを証明できます。
また、きちんとした売買契約書を作成することにより、契約内容の理解のずれや、引渡された物件に見えない欠陥があった場合等のトラブルを避けることも可能です。
不動産会社に依頼すると多額の費用がかかるのではと心配になりますが、親族間売買ではすでに売主と買主が決まっているので仲介手数料を値引いてくれる場合が多いです。取引の安全性や、何かあった場合のトラブルを未然に防ぐための保険として不動産会社に依頼するのもよいでしょう。ただ、不動産会社によっては親族間の売買という理由で詳細な物件調査をしない会社もあります。しっかりとサポートしてくれる信頼できる不動産会社を選ぶ必要があります。