意外と知らない「借地権」のしくみとは?
——立地が良いのに価格が安い理由を解説します。
物件探しをしていると、好立地なのに価格が抑えられた物件を見かけることがあります。よく見ると「借地権」と書かれていて、「借地権って何?」と気になった方も多いのではないでしょうか。
今回は、そんな借地権の基本から種類、メリット・デメリットまでをわかりやすく解説します。
借地権とは?まずは“家の買い方”の違いから
住まいを購入する場合には、大きく次の2パターンがあります。
- 土地と建物を両方購入する(=所有権)
- 土地を借りて建物だけ購入する(=借地権)
一般的な「家を買う」というイメージは①の所有権ですが、②にあたるのが借地権付き物件です。
借地権はさらに以下の種類に分かれています。
- 旧借地権
- 新借地権(普通借地権・定期借地権)
ここからは、それぞれの特徴を見ていきましょう。
旧借地権と新借地権の違いとは?
1992年の法律改正により、新たに「新借地権」が制定されました。ただし、旧借地権と新法の普通借地権は内容がほぼ同じと考えて問題ありません。
どちらも借主の権利が強く、正当な理由がなければ借主は住み続けることができます。いわば“賃貸と似ていますが、より安定した権利”といったイメージです。
なぜ「定期借地権」ができたのか
定期借地権は、借地期間に明確な期限(一般的には50年)を設け、更新ができない制度です。
定期借地権ができた背景には、
- 公的機関や寺院などが「良い土地を貸したいが、ずっと戻ってこないのは困る」
- 良い土地を市場に出しやすくするために制度を整えた
といった事情があります。
その結果、好立地の土地が“期間限定”で市場に出回るようになり、定期借地権としての物件が増えました。
定期借地権の特徴
- 更新不可、期間満了で更地返却が必須
- 好立地の土地が選びやすい
- 初期費用が抑えられる
- 期間が短くなるほど資産価値が下がり、売却しづらい
- 建物の担保価値が出にくいケースもある
所有権・借地権それぞれのメリット・デメリット
◆ 所有権のメリット
- 土地と建物の両方が自分の資産になる
- 土地を担保にしやすく、ローンも組みやすい
- 地代がかからない
◆ 所有権のデメリット
- 固定資産税・不動産取得税が必要
- 初期費用が高くなりやすい
◆ 旧借地権・普通借地権のメリット
- 土地を買わないため初期費用が抑えられる
- 好立地であることが多い
- 基本的には返還義務がない(1922年以降の物件)
◆ 旧借地権・普通借地権のデメリット
- 土地は自分の資産にならない
- 担保にできないためローンが組みにくい場合がある
◆ 定期借地権のメリット
- 好立地であることが多い
- 初期費用を抑えられる
- 固定資産税・土地取得税が不要
◆ 定期借地権のデメリット
- 更新できず、期間終了で必ず返却しなければならない
- 建物だけの資産になるため、売却が難しい
- 担保価値が出にくい
借地権が向いているのはこんな方
- 資産を子どもへ残すことを重視していない方
自分の代だけ快適に住むことができればいいという価値観の方。 - 短期~中期で住み替えを考えている方
所有権は初期費用回収まで7年程度と言われるため、
「賃貸よりは持ち家に」「でも長く住むつもりはない」
という方に適しています。
まとめ:借地権=避けるべき、はもったいない選択
借地権は「ローンが組みにくい」「土地が自分のものにならない」などのデメリットだけが注目されがちですが、実際は好立地に手が届きやすい大きなメリットがあります。
特に、旧借地権や普通借地権なら返還義務もないため、
「借地権だから」と即除外してしまうのは非常にもったいない選択です。
所有権と借地権の両方を比較し、
ライフスタイルや資金計画に合った選択をすることが大切です。