コラム

任意売却とは?通常の売却と比較してメリットやデメリットを解説

不動産売却を考えている方の中には住宅ローンの残債がある状態で売却する人も少なくありませんが、住宅ローンで購入した不動産を売却するにはすでに住宅ローンを完済しているか、売却金額で住宅ローンを完済できる状態でなければなりません。

ローンの残債を完済することができず、通常の売却を行えない場合の最後の手段として利用できるのが任意売却です。任意売却を行えば残債があっても売却が可能ですが、いくつかのデメリットもあります。今回は、(1)任意売却とな何か、(2)任意売却のメリット、(3)任意売却のデメリット、(4)任意売却を利用するための条件について解説します。

(1)任意売却とは
任意売却とは住宅ローンが残っている状態で債権者の合意を得て不動産の売却金額と自己資産で完済できない状態で不動産を売却する方法です。

通常の不動産売却との違い
任意売却をするには債権者の合意が必要です。要するに、金融機関に拒否されると任意売却はできません。金融機関からの許可が必要な点以外は通常の売却と大きな違いはありません。

任意売却をしなかった場合に起こり得る競売
一般的に任意売却は住宅ローンを支払えない場合に利用します。これは住宅ローンを滞納し続けることで起こる競売を回避するためです。競売とは債権者の申し立てによって裁判所が不動産を強制的に売却する手続きを指します。競売に出された物件はオークションの要領で取引され、一番高い入札額を提示した人がが購入します。通常の売却と任意売却の仕組みは異なるため、競売では売却価格が7割程度まで減少することがほとんどです。競売になる前に任意売却を行うことをおすすめします。

(2)任意売却のメリット
任意売却のメリットは大きく分けて3つです。
① 通常の売却と同程度の価格で売却できる
② 周囲に事情が知られにくい
③ 契約日や明け渡し日に関して売主の融通がきく

① 通常の売却と同程度の価格で売却できる
任意売却では市場価格に近い価格で売却できます。一般の不動産取引と同じような流れで行うため、任意売却での売買は時間をかけてじっくり行うことができます。家が高く売れれば支払いに充てることができるので、自分の希望に近い価格で購入してくれる人を探すことができます。

② 周囲に事情が知られにくい
任意売却の売却活動は一般の不動産売却と変わりませんので、近隣などの周囲に知られずに売却することが可能です。一方、住宅ローンを滞納し続け競売になってしまうと、裁判所は全国から入札者を募るため、裁判所が運営する不動産競売物件情報サイト 通称『bit』に物件の情報を掲載します。このサイトは誰でも閲覧でき、住所だけではなく外観写真なども公開されるため近隣に事情を知られる可能性が高まります。

③ 契約日や明け渡し日に関して売主の融通がきく
売主と買主が対等の立場で取引できるため、任意売却では細かい条件を話し合いで決めることができます。競売の場合は売主の事情に関係なく強制的に売りに出され、契約が決まれば退去が命じられます。最終的な売却金額や家の引き渡しなど、ある程度融通をきかせられる点が任意売却のメリットです。

(3)任意売却のデメリット
任意売却のデメリットは3つです。
① 債権者や保証人の合意や同意が必要
② 任意売却までの過程で信用情報に傷がつく
③ 売却金で完済できない分も原則返済が必要となる

① 債権者や保証人の合意や同意が必要
売却を行うには債権者の同意が必要になり、同意が得られない場合は任意売却はできません。想定される売却価格が残債額とかけ離れている場合は合意を得られないこともあります。同時に共有名義人や連帯保証人が要る場合は関係者の同意が必要となります。

② 任意売却までの過程で信用情報に傷がつく
任意売却を行うための条件として、住宅ローンを3ヶ月から半年程度滞納してる必要があります。例えば3ヶ月も住宅ローンを滞納すると個人情報に傷がつき、いわゆるブラックリストに入れられる可能性があります。任意売却を行うまでの過程で信用情報に傷がつくのです。ブラックリストに載ってしまうと、クレジットカードを一定期間作成できない、新たなローンを組むことができないなどのデメリットが発生します。

③ 売却金で完済できない分も原則返済が必要となる
債権者へのローン返済に回るため、任意売却で得たお金は手元には残りません。任意売却をするのですから家の売却金でも住宅ローンを完済できない場合がほとんどです。残ったローンに関しては、債権者と相談しながら無理のない範囲での返済スケジュールを立てましょう。

(4)任意売却を利用するための条件
① 住宅ローンを滞納している
② 売却活動に充てる時間が十分にある
③ 共有名義人・連帯保証人の合意がとれている
④ 税金の滞納で差し押さえを受けていない

① 住宅ローンを滞納している
任意売却はあくまでも競売を回避する手段として用意されています。問題なく住宅ローンの返済ができる人に任意売却を許すメリットは金融機関側にありません。そのため、ある程度は住宅ローンを滞納していることが前提です。おおよそ3カ月から半年程度滞納すると「期限の利益損失通知」を受け、一括返済を求められます。この段階まで来ると任意売却を利用しやすくなります。

② 売却活動に充てる時間が十分にある
ローンを滞納し続ければ競売が始まり、落札されれば退去を余儀なくされます。任意売却の様に通常の不動産売却と同じ工程で売却を行うにはおよそ3ヶ月~6ヶ月程度の期間が必要になります。競売が開始しても改札記述の前日までなら任意売却を行うことは可能ですが、時間が十分になければ先に競売で落札されてしまいます。

③ 共有名義人・連帯保証人の合意がとれているか
任意売却を行う際には共有名義人、連帯保証人からの同意を得る必要があります。

④ 税金の滞納で差し押さえを受けていない
すで固定資産税や所得税、住民税などの滞納によって住宅の差し押さえが決定している場合は任意売却を利用することはできません。その際は役所と交渉し差し押さえを解いてもらう必要があります。

まとめ
今回ば任売却のメリット・デメリットの解説、任意売却を利用するための条件を紹介しました。競売に比べれば簡単にいい条件で売却できる任意売却ですが、ローンが0になるわけではありません。可能であれば売却金額で住宅ローンを完済させたいですよね。住宅ローンを売却金額で完済できるか確認するには、不動産会社に自宅を査定してもらうのが良いでしょう。査定価格は不動産会社によって異なるので、複数の不動産会社で比較することをおすすめします。